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「……な、何嘘こいてるんだい!? そんなわけ……」
「あるんだよ。嘘だと思うなら自分達で計算して見ろ」
一夜は依頼人の言葉を遮って挑発する。
一夜が嘘をつくとは思えない。
根拠はないが、玲奈はそう思っていた。
「……と、とにかく! あんたが何言おうと、その小娘はこっちに渡してもらうからね!!」
「ひ……!!」
ユイはいつの間にか一夜に引っ付き、彼の後ろに隠れていた。
すると一夜は、どこからともなく袋を取り出した。
それは、依頼人から受け取った報酬金。
一夜はそれを、人々たちに向かって投げ捨てた。
「! な、なんだい!?」
予想外の行動に慌てる依頼人。
「選べ。このままこいつをふん捕まえるか、金を帰してもらってこいつを見逃すか……」
一夜はそういった。
「な……!」
「簡単な質問だぜ? 奴隷一人か金か、どちらを選ぶかだ。……まあ、俺的には、てめえらケチ共の金なんて欲しくねえがな」
意外な台詞だった。
ユイを護ったところで、一夜には何の得にもならないはず。
なのに彼は、ユイを護ろうとしている。
懸命に……。
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