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君は、神を信じるだろうか。
偶然という名の運命を、誰の目の前にも敷き詰め、並べて、おおよそ僕らのような下っ端にはわからないような目的のため(いや、そもそも目的があるのかどうかも怪しいところだが)世界を意のままに操る、
そんな下衆野郎の存在を、
君は信じるだろうか。
寺西小黒(てらにし こくろ)は、どこにでもいる普通の高校生だった。
…というのは全くもって正しくない。
寺西小黒は、どこにでもいる普通の高校生だったが、「普通の人間」ではなかった。
これが正しい表現だ。
彼の母親は、彼が幼稚園の頃に亡くなり、父親は顔すら知らない。
今でこそ狭いアパートに一人で暮らす彼だが、義務教育を終えるまでは厳格な祖父の元で育てられた。
祖父というのは母の父にあたる人物であり、無論「寺西」という姓も母方のものである。
この寺西家には、代々務めている「役職」があった。
『冷泉高校生徒会 会長補佐』
馬鹿馬鹿しい、と
小黒は思った。
高校入学が決まった日、祖父に重々しく告げられたときでさえ、思わずそう溢してしまったほどに馬鹿げていると思った。
代々継いでる家業が生徒会の役員だ、なんて誇りどころかいじめの原因くらいにしかならない。
そしてそれ以上に、これまで祖父が見せていた厳格さが「この高校に入学するのにちょうどよい人間」を育てるためのものだったということに、ひどく幻滅したのだった。
そういうわけで、自らすすんで選んだ高校の晴れの入学式とあっても、小黒の心は英国の空のように重たく沈んでいた。
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