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「何もしないよ。何も考えてないから車に乗っけちゃったんだから。帰りたかったら家まで送り届けるよ」
「タクシーぃ、もしくは、アッシーぃ」
助手席の彼女がそう言うと、間髪入れずにアフロな彼は彼女を小突いた。
痛いなぁ、と文句を言う彼女はさっきから何かと楽しそうだ。
「い、いえ。家に帰りたくないのです」
「い、い、イェェっ!」
「やめろって」
両手を上げてはしゃぐ彼女を彼は再び小突いた。
「家に帰ると気まずい?」
「き、気まずい、とかそういうのじゃありません」
気まずいんじゃなければなんだろう。
年頃の女の子だから、家出でもしたいのか?
「つまり、飛び降りようとか考えたのは家庭の事情が原因と」
アフロの彼は、ハンドルに寄りかかってため息をつくようにそう言った。
でかいアフロ頭のせいで、車の前方右半分は見えない。
「いきなり核心ついちゃうねぇ、デリケートな問題なんだからぁもっとゆっくり聞いてよかったんじゃないぃ?」
「い、いえ、その通りですから」
少女は肯定と否定を行う為に、忙しなく首を縦横に振った。
真面目にやっている分、壊れた音に反応するオモチャのようで可笑しかった。
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