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車は路地に入ったので、右に左に忙しく曲がる。
彼の下手くそな運転に、おう、おう、おう、とオットセイの真似事をしてるかのような声を漏らす俺と彼女を横目に、少女は華奢でか細いその身体とは裏腹に絶妙にバランスを保って何食わぬ顔で座っていた。
「んで、何処に行く気なんだよ? 元の場所に行ったって捕まってしまうかもしんねぇぞ」
「だ、そうで。何処に行きたい、お嬢さん?」
「お、お嬢さんは止めてください、わ、私は……」
ち、ち、ち、と助手席の彼女が言って少女の言葉を遮った。
「名前を呼び合う程のぉ関係じゃないよねぇ」
「キャッチ&リリースな関係だからな。自己紹介は適当に。オレはアフロでいいや」
アフロは頭を撫でる。
いや、アフロはアフロを撫でる。
自分で名乗って置いて恥ずかしいのだろう。
「んじゃぁ、私はシンデレラぁ!」
「コイツの事は、ギャル姉さんでいい」
「なんでよぉ。せめて姉さんってつけるなよぉ」
うるさい、ギャル姉さん黙れ。
姉さんという配慮をありがたいと思え。
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