そんじょそこらのロックンロール

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「その娘さ、空から降ってきたんだよね」  急に詩人めいた事を言われたので、なぜだか可笑しくなった。  普段の彼は、そんな事を決して言わない。 「街歩いてたら降ってきたんだよ。んで上手いことキャッチしちゃってさ。キャッチ&リリースといきたいところだったけど、リリースする場所が見当たらなくて……」 「車に連れ込んだ、と」 「連れ込んだって、また人聞き悪いな」 「私らしかぁ乗ってないけどねぇ~」  また彼と彼女は、ね~、と言葉を合わせる。  その合わせ、気に入るほど面白いか? 「で、どうすんだよ?」  ん~、と悩む彼。  アフロをボリボリと掻いている。  どう見ても、頭皮にまで届いていない。 「いつも通りぃ、決まってないんだよねぇ」 「いや、そこは決めとけよ。どうすんだよ、彼女。下手したら誘拐が冗談ですまないぞ」 「そいつは困った。やっぱり元々落ちる予定だった場所にリリースしてこようか」  ミラー越しに見る彼の顔は、なぜだか困っているどころか楽しそうだった。
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