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「あ、あの……」
か細い声とはこういうものかと思うほどの震えた声が、俺の横から聞こえてきた。
「おはよう、お嬢さん」
アフロな彼がそう言って少女に呼びかけると、少女はかかっていた毛布を強く握りしめた。
どうやら、怯えているようだ。
無理もない、天国行きかと思って目を開けたなら、目の前にでっかいアフロがあるのだから。
「て、天、使さん……ですか?」
助手席の彼女が思いっきり何かを吹き出した。
まぁ多分、唾だ。
まったくもって汚いが、笑いをこらえきれなかったのには理解を示そう。
少女のか弱さを横目に見てなければ、今の発言は渾身のジョークだ。
「いえぇ、単なるアフロさんですぅ。ぶはっ」
止めろ、自分で言って自分で吹くな。
こっちにも笑いを巻き込むな。
少女が困惑してるじゃないか。
アフロに肩を小突かれて、助手席の彼女は口を閉じた。
笑うのを我慢してるせいで頬が膨らんでるのが、ミラー越しでもよくわかった。
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