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「あ…あなた達は?」
一瞬焦りの色を隠せなかった神父が、色めき立って答えた。それもその筈、敵国の襲来の為、ほとんどの住民が自身の家の地下シェルタ-に身を隠している状態でなければならないのに、目の前には裸も同然の幼い子供達が、この戦火の中を潜り抜けここに来ていたのだから…。
尚且つ神父でさえ、教会の地下に閉じこもり、嵐が過ぎ去るのをじっと待っていた所なのであろう。
恐らく誰もいる筈のない教会に響き渡る若い女性二人の声に気付き、顔を見せたのだ。
「あなた達…そんな所にいると命が幾つあっても足りませぬぞ!さぁさ…こちらへ、さぁ…」
ジャネット達は神父の顔を知っていた為、安心して彼の誘導に従い地下へ続く階段へと歩いて行った。無論神父さんも彼女達の顔を知っている。熱心に通う彼女達の名前すらも。
こうして二人は神父さんに誘導されながら教会の古びた地下室へと潜って行った。
…それからしばらくして…
一発の赤く熱せられた砲弾が教会の鐘塔の脇をスレスレに通り過ぎて行った。弾の風圧は火星の大気を歪まし、その振動を巨大な鐘に波伝していく。鐘は自然に揺さぶられ大きな音を辺りに響き渡らせた。
誰も居ない教会地上部分の鐘の音が、まるでゴ-ストによる悪戯かのように不気味に教会内にも木霊する。それは地下通路の空洞を通り抜け、ジャネット達がいる地下壕にも不気味に響き渡る。
「何かしら?」
「お姉様…怖い!」
恐怖に怯える二人を教会の神父が宥める。
「安心して下さい…。恐らく銃弾でも飛んで来て鐘にかすったのでしょう。上には誰もいませんよ…」
その言葉を聞いて安心した二人だったが…その直後、物凄い地響きと共に教会が、地下壕ごと大きく揺れ動いた。
目線を地上に戻すと、そこには今まであった教会の建物が、跡形も無くなっていた。もう1発の外れた砲弾が、教会を直撃したのだった。レンガ作りの豪華なロマネスク様式の建物は、土台のみを残して木っ端微塵に吹き飛んでいた。鐘塔にあった鐘は、異様な程の衝撃の為、その原型の半分ほどしか留めておらず、その十数m先の草原に無惨にも瓦礫と共に打ち捨てられるように転がっていた。
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