第3章 運命の出会い…

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「…そう今でもかなり深く土壌を掘り下げると、旧時代の異物が沢山出るそうなの。お父様から話を聞いた事なくて?」  …そうジャネットが話す父親の話…、2人の父親は戦争状況が悪化する前、農業をやりながらも考古学の勉強をしていたらしい。そんな父が倉庫に残していた文献やレポートが、幾らか彼女達の家の倉庫に残されていた。ジャネットは父からの話に興味を持ち、暇さえあれば倉庫に入り浸り資料を読みあさっていたのだ。 「聞いた事あります…しかし、私はどちらかと言うと大地に根を力強くはる麦や銀杏、杉などの植物に興味がありましたから…」 「そうね…あなたは昔からいつも母親にくっついて植物の話を熱心に聞いていたものね」  そうこう話をしている間に、また別の部屋に来てしまっているようであった。部屋は完全に分離されているのではなく、境界壁があるかないかぐらいの小さな突起壁によって区切られており、その境界線から急にその模様が変わっているように見えた。 「…ここは…」  ジャネットが松明を掲げ、見上げるその前に巨大な彫像が姿を現した。行き止まりの壁に歪な形で突き出すその彫像は、部屋が暗い為、全体は見渡せないでいたが、どうやら人型の彫像である事が足元のその形式から推測する事が出来た。 「お姉様…出口はないのかしら?」  しばらくその彫像を眺め黙り込んでいたジャネットが、それに不安げに答えた。 「ん…出口…見つからないわね…」  その不安を押し消すかのように、更に強い口調になり話を続けた。 「…だって!命が助かっただけでもいいじゃない。いずれ出口も見つかるわ。さぁ一生懸命探しましょう」  2人が諦めずに彫像の周りを隈無く探していると、その脇に小さな扉のような切れ目が入っているのに気が付いた。 「お姉様!」 「…うん、ちょっと待ってね」  ジャネットがその切れ目に沿って手でレンガをなぞってみる。微かに切れ目から空気がこちらに流れてくるのがわかる。 「間違いないわ…この先に通路がある」  心配するミミが答える。 「でも…」 「任せといて」  ジャネットは物は試しとばかりに精一杯の力で、その扉らしきものを押してみた。すると僅かに錆びた蝶番が軋む音がし、そのブロックの一部が奥へとずれ込んでいった。  
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