第4章 鼓動

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 脈打つ鼓動…  唸るマシン…  解放される『心』  ジャネットはコクピットの中、その清々しい心身の解放とも思える快感に浸っていた。  彼女の手足に絡み付く『触手』…。その心情に呼応するかの如く伸縮を繰り返す。  その鼓動は時として自分の体中を流れる血液の流れのように…。  瞼を見開いた彼女の前に、ぼんやりと外界の様子がその装甲を通して見えていた。もう少しはっきりと見えないものか…などと思っていると、次第にその外殻が薄くなり、より鮮明に視界が開けて見えるようになった。外部から見ると、それが外殻が薄くなったのでは無く、彼女の思考によりその『人型』自身が目に見た物をその内部にビジョンとして表している事がわかる。  ゆっくりと動くその機体の前に、小さな体を震わしこちらを見上げるミミの姿があった。それを確認したジャネットは、『人型』のコクピットハッチを開くと彼女に告げた。 「さぁ…ミミ…。怖がらずにおいで」  その言葉の後に、彼女の思考をそのまま具現化するように『人型』の細い腕がミミのもとへと伸びる。しかし、ミミは怖がり小さな体を震わせるだけ…。 「さぁ…おいで…」  更に伸びる巨大な腕がミミの目の前まで迫る。しかし、ミミはその時何故か不意に恐怖を感じなくなった。  その巨大な手からは彼女の温もり…そう、いつもの優しいあのジャネットの温もりを感じ取ったからだ。ミミはゆっくりと恐る恐るではあるがその手に触れていく。間違いないない…お姉様だ。彼女は咄嗟にそう思いその巨大な手のひらに身を委ねた。  コクピット内部へと運ばれたミミの体は、その姉と共に『人型』の内部へと閉じ込められた。 「さぁ!脱出するよ」  力強い掛け声と共に、『人型』が頭上の出口を見上げる。  ミミは、それにただただ頷くだけであった…。  『人型』はその人間のような伸縮自在の筋肉的組織を凝縮し、跳躍の体勢を取った。 「行くよぉ!」  ジャネットの掛け声と共に巨大な『人型』が、有り得ない跳躍力を見せる。迫り来るレンガの壁に、手足を突き刺し宙吊りになった『人型』は、蜘蛛が壁を這うようにして勢いよくその天に聳える光に向かって登り始めた。
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