第4章 鼓動

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 自機の肩幅より狭い井戸も何のその、外壁を崩しながらも登って行く。不思議な事にその『人型』の外殻には、傷ひとつ残らない。  …しばらく登り詰め、やっとの思いで地上に這い出たジャネット達。古井戸を取り囲むブロックが弾け飛び、そこから蜘蛛のような細く長い腕が突き出てくる。ぐぐぐと力強く屈伸した腕が地下のその胴体を引っ張り上げた。 「やった!お姉様!外です。外に出られました」  しかし、喜ぶのも束の間であった。突如林から姿を現したその『人型』を、やっとの思いで決着を付け勝利した王国軍の『ヘッジボット』の1騎が見つけてしまったのだ。  植林された木々はまだ低く5~6mにしか達していず、ジャネット達が操る『人型』の頭部だけが露わになってしまっていたのだ。  王国軍戦闘域…  1騎の準士官の『ヘッジボット』がその位置から北方の約500m程先の辺りで木々が散乱し、そこから1騎のH・Aらしき姿の物体が頭を覗かせたのを見つけ出した。 「こちら第三機甲騎兵小隊ドック3…ウルフリーダー応答願います…」 「ジジ…こちらウルフリーダー…どうした?」 「ここより北方500m程先の林の中に正体不明機を視認…」 「ジジ…何!?IFF(敵味方識別装置)に反応は?」 「いえ…どちらも発信していない模様…」  その無線を受けたウルフ大隊の隊長、レッドボディの機体に乗るリネケウス機甲騎士団隊長補佐は瞬時に思考を巡らせた。  味方増援部隊が来る事など知らされてない。ましてや通信から見るに見たこともない機体。もしや敵方の新型か…。隊長は憶測の中、敵新型の可能性を含め捕縛を決意。近場にいる第1、第3機甲騎兵小隊全機に捕縛の指示を出した。 「ウルフ、ドック両小隊に告ぐ。恐らくは敵新型兵装と思われる…可能な限り無傷で捕らえよ!」 「「了解」」  第1、第3小隊全機から無線が返ってくる。先ず最初に動いたのは近場のドック隊四号機であった。 「ドック4、120mmHEAT弾装填準備良し!…目標12時の方向…距離500…ロック解除」  ドック4の機体のHUD(ヘッドアップディスプレイ)に緑色のマーカ-が灯る…。そのマーカ-が動きを止め赤色に変わった。 「ロックオン!…発射!」  パイロットが操縦桿のトリガ-を引くと、ヘッジボットの構えていた巨大な砲身より真っ赤に染まった120mm弾が弾け出した。
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