第2章 ロレアンヌの少女

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 巨人兵H・A…この時代の汎用人型兵器(Humanoid Arms)、鋼鉄の装甲で身を包んだ局地戦略型ユニット。それぞれの国自体が保有し、フォルムは国それぞれ。全高約6m、重量15tが標準的。多種多様な装備で戦略に随時した攻撃が可能となる旧時代の遺産とも言える代物。この他に装甲車や戦車、幾らかの航空機の技術は現在も残っている。  ネルガル王国の機甲騎士団のH・Aのフォルムは旧時代のそれをそのまま活用しており、ヘッドのない分厚いボディ装甲に外部単眼カメラが付く簡素な造りとなっている。辛うじて発掘された赤外線アイの設計図にて、夜間行動も可能。脚部は太く安定性と強度を保つ。騎士と言うよりは、人の型をした戦車と言った方があっているかも。隊長機には分かりやすいようにヘッド部分が赤く塗装され、レッドボディと呼ばれる。機体名は『ヘッジボット』  その巨人兵たちがジャネットのいる農政管区に草木をなぎ倒し、地面を削りながら徐々に近づいて行く。  その時であった。農政管区の防衛警報が、けたたましく鳴り響いた。  ジャネット達は、その警報を走ってる最中に聞いた。急に立ち止まるジャネットに、ミミがぶつかって喚き散らした。 「いった…お姉様急に…」  それに気付き後ろを振り向いたジャネットは、ミミの安否を気遣い声をかけた。 「ごめん…ミミ。しかし、何なの?急に…。王国軍の進軍なんて知らされて無かったわ」  それもその筈である。大抵の場合は近場に王国軍が近づいた時には、全区に事前に警報がなされるのである。しかも、こんな田舎の農政管区にある居住地に軍が部隊を送る事自体が信じられない事であった。 「あっ!お姉様!あれを…」  ミミがその小さな手で指差した先に、公国軍のH・Aが姿を現した。  王国軍のそれとは似ても似つかず、綺麗な流線型の人型フォルムに白いボディをした公国軍のH・Aが、彼女達の家屋のその向こうから姿を現した。  公国軍のH・Aの機体名は『フォルク』。綺麗な人型フォルムに白いボディ。ヘッドは横長のカメラカバーが付き外見の良さをアピール。ヘッドサイドからはダクト上にレシーバ-アンテナが付き、手足もそれに伴い細くまるで人間の筋肉をそのまま表したような出で立ちをしている。その分装甲は弱そうだが…。
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