第2章 ロレアンヌの少女

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「な…東側からフォルクが…。もしかしたらセイレ-ンを迂回して!?…背後から奇襲攻撃!」  ジャネットがそれに気付いた瞬間、一発の光弾が頭上を走る。その弾筋は公国軍の1騎の胸部に風穴を開け、それを爆破させた。爆風と幾らかの欠片が、ジャネット達をも襲う。 「きゃぁぁ…!ミミ?ミミは大丈夫?」  その場に爆風で飛ばされたジャネットは、ミミの身を案じた。  大事な妹ミミ…幼少の頃から大事に母親と共に育ててきたミミ。兵役で二人の兄と父親を軍に取られてしまった彼女に取って、それはとてつもなく大事な家族であった。自分の命を投げ出してでもいい、妹だけは生かしてやりたい。そんな母親にも似た気持ちで、辺りを見渡す。 「大丈夫だよ…姉さん…」 「良かった…」  安堵の溜め息を付いた二人が見た家屋では、玄関付近から母親のシルクが手を拱いて二人を必死に呼んでいた。 「ジャネット!ミミ!早くこっちへ!」 「母さん…」  何かの決心を決めたように歯を食いしばりミミの方を振り向いたジャネットは、立ち上がると倒れているミミの手を取り呟くように言った。 「行くよ…ミミ」  公国軍と王国軍が小競り合う爆発音と砲声の中、聞こえるか聞こえないかの呟きだったが、妹のミミはその言葉をはっきりと聞き取っていた。 「…うん! 」  コクリと頷いたミミは、ジャネットと共に全力で母親の元に走り出した。  その時である…  後方から再び、聞いた覚えのある空気を切り裂く音が近づいてくる。敵が放った対装甲用炸薬弾。ジャネット達が夢中で走るその頭上を無情にも通り越し、家の方へと向かう。目の前には手招きし続ける母親シルクの姿。 「お…お母さぁん!」  ジャネットが叫ぶも、その弾頭は彼女達の家の屋根をぶち破り室内へと落下して行った。  走る脚を緩め、頭の中で必死に現実何がおこっているのか理解しようとするジャネット。その時間は永く弾頭が炸裂する間、色んな思考が無造作に頭の中に流れて行く。  巨大な閃光と共に、今まで安寧の場所だった赤レンガの家が、見るも無惨に砕け散った。ジャネットが再び眼(まなこ)を見開いた時には既に、その外郭はそこに存在していなかった。  その数m手前に、辛うじてその外見を留めている母親が、うつ伏せのまま横たわっているのが見えた。 「か…母さぁぁぁん!」
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