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母親から受け取るように手にした『何か』を、ミミは静かにジャネットに渡した。ジャネットはその『何か』を手のひらに乗せ、マジマジと観察してみる。それは、彼女の記憶にある物であった。
小さなダルク家の紋章が施された鍵のような物…生前の母親が、話していた事を朧気な記憶の中から掘り出していく。
…ロッキングチェアに寄りかかり編み物をしていた母が、急にその手を止めジャネットを呼び寄せた。急いで近寄り、母親にすがるようにして彼女の話に耳を傾ける自分…。唐突に母が、その鍵のような物を取り出して語り始めた。
「ジャネットや、ようくお聞き…。これはね…先祖代々ダルク家に伝わる家宝の『キ-』なの。何の鍵だかはお母さんも知らないけど…。代々ダルク家の長女が受け継ぐ物らしいのよ…。ジャネット…これはあなたが物や人を大事に出来るようになった時にお母さんからあなたに譲るわ。その時が来るまで預かっとくから…その時が来るまで…」
ジャネットの幼少の時の記憶は、そこで途切れていた。
…その時…その時って今なの?母さん!…
…私にはまだわからない…何が大事なのか…愛ってなんなのか…
17才になったばかりのジャネットには、まだまだわからない事が多すぎる。そんな愚問にくれてたその時、ふと脳裏の片隅にもう1つの言葉を思い出した。
「あなたには不思議な力があるわ。人と違っていても案ずる事はない。自信を持って生きなさい…」
母親は、そう自分にいい聞かせた事があった。内心何を言ってるんだ、変わり者呼ばわりされたら気分滅入るじゃんか…などと思ってたっけ。そんな母親を憎んだ事もあった。
…でも今は違う!
はっきりと感じ取れる。その言葉の意味はよくわからないままだったが、何かをしなければ…と言うような感じがしてきた。…そう私が何とかしなければ…
ジャネットは、ミミを見てお互いに頷き合う。姉妹だからこそ、何も言わずとも相手の意思を読み取る事が出来る…いや実際にはこう思ってるだろう…なのだが、意外にそれが的中したりするのだ。頭上では、未だに両陣営の戦いが繰り広げられていた。
「ミミ!おいで…。とりあえずはここから逃げよう」
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