向かう先は

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「んっ………?」 神吼が目覚めると、そこは薄暗い空間だった。 むくり、と神吼が起き上がる。 「どこだここ…」 辺りを見回すと、子供が何人かいた。 ただし、その顔は子供特有の元気なものでなく、どんよりとした、今にも泣きそうな顔だった。 「………これはもしかすると」 自分の衣服を見る。 着ていたはずの制服はなく、ボロきれのような服になっている。 (極めつけに) その空間の出入口になっている部分は鉄格子によって阻まれており、その外に人がいた。 (こりゃあどっからどう見ても) ………捕まえられた、か。 状況確認をする。 (服がない、刀もない、つーか初期装備が全てなくなってこの服っぽい布一枚) そしてこの状況。 つまり導き出される答えは 「確実にここは牢屋と」 「ひっ」 一人の子供が神吼の言葉を聞き、泣きそうになる。 すると、この牢屋の中で神吼の次に最年長そうな少女が睨む。 というより、神吼以外は全員15歳にもなってなさそうな女の子である。 「あんた、それは見れば分かるでしょ?!そんなこといちいち口に出さないでよ…!」 少女の服は珍しい… (ああ、そうかここ三国の世界だっけ) この少女がコスプレでもしてない限り、恐らくむしろ珍しい格好だったのは神吼だろう。 「ちょっと!聞いてんの?!」 「ああ、悪かったよ俺の失言だ」 確かにこういった緊迫した状況下で神吼先程の発言はあまり好ましくない。 少女がまた神吼が起きたときのように静かになる。 その少女の目もさっきは怒っていたが今はしょんぼりしていた。 (はぁ…ま、気を取り直してと…さてどうやって出るか) 牢屋を見張っている男は呑気に寝ている。 格好を見ると (ん?あれは黄巾…) 黄色い服に頭には黄巾党と言われるが所以である黄巾を被っている。 (説明が違う?…いや、残党か…) 一人、考えていると見張りがここにやって来た仲間に起こされ、何やら話している。 そして、見張っていた男が入って来る。 「おい!そこの銀色とお前!さっさと出て来い!」
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