向かう先は

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(「銀色」は俺、「お前」は…) 見張りの目線の先には先程の神吼を怒った少女がいた。 さっきとは打って変わって、あからさまに怯えている表情だ。 (当たり前か) 神吼がめんどくさそうに腰をあげ、見張りの男の横に行き、手錠を掛けられる。 (今更手錠か…余程の自信があるのかねぇ…) 神吼がどうでもいいことを考えていると、見張りの罵声が突然響いた。 「おい!クソガキ!早くしろ!」 見ると、未だに少女は座っており、ビクビクと震えていた。 そしてやっと少女も腰をあげる。 「は、はい…すいません…」         ‡†‡ 連れて来られたところは、牢屋の何十倍はあろうかという程広い空間だった。 屋敷、というわけではない。 壁は全て、土で出来ているところを見ると、トンネルと表現するのが正しいかもしれない。 と、その空間の一番奥。 そこに男がいた。 「連れて来ました、管亥(かんがい)様」 「ご苦労」 管亥と言われた男はそう言うと、連れて来た男を下がらせた。 「まずはてめぇだ」 「ん?」 神吼が指名される。 「てめぇ…何モンだ?」 (ま、そうくるよな) ここに呼び出された理由は何と無くだが分かっていた。 「あの服、あの武器。この辺のヤツじゃないだろ?」 制服に日本刀。確かに三国志の物語上、そんなモノは存在しない。 (疑問に思うわな…) 依頼には支障はないので正直に答える。 「俺は日本って国で生まれたんだ」 「ニホン?んな地域聞いたことねぇな」 「だろうな」 神吼は怠そうに答える。 「そうか…」 すると管亥は、まるで興味が失せたように言った。 「じゃ、そいつ殺しとけ」 「へい」 後ろに下がっていた男が、さも当然のように答えた。 「男は高く売れねぇからな」 (おいおい) 三国志の世界でも一番ごちゃごちゃしていた時代とは言え、この発言はかなり狂っているだろう。 平和ボケした日本にいれば尚更である。 そしてギンッ!と視線を少女に向ける。 「次はてめぇだ。服脱げ」 「―――ッ」 少女は泣く寸前まできていた。 恐らく管亥がしようと思っているのは、悪く言うと…品定めだろう。 この少女がいくらくらいで売れるかどうかの。 まったくもって……… 狂っていた。
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