舞台の幕開け

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お互いの確認が終わると白装束は説明を始めた。 「これから獅靖殿には、とある世界に飛んでもらいます」 「?」 理解出来なかった神吼は無言で説明を促す。 「三国の世界に」 「三国?」 三国、と言えば三国志か? しかし、それでも理解出来ない。 こいつらが言ったことを実行するとなると、ようするに、 「三国志の時代にタイムスリップっつーことになるな」 「はい、そういうことになります」 「………おちょくっているのか?」 そんなふざけたことがあってたまるか。 タイムスリップ? 「馬鹿馬鹿しい」 「お気持ちはよく分かります」 白装束は神吼を宥める。 「信じて欲しいのなら証拠が欲しいな」 「分かりました。…獅靖殿は妖術、というのはご存知でしょうか」 「妖術?まあ一般知識程度なら」 「それを使えたら信じていただけますか?」 「………良いだろう」 半信半疑だったが、あまりにも白装束が自信満々だったので見てみるだけ見ることにした。 「高等な妖術は使えませんが現実では有り得ないことくらいは出来ます」 一人の白装束がそう言うと、右手を突き出し、手の平を上に向ける。 と、白装束の手の平に炎の玉が浮かび上がった。 「へぇ」 神吼は興味を持ったようにその炎を見る。 神吼が見たところ、タネも仕掛けもないようだ。 「『妖刀は見たことある』が妖術は初めてだな」 神吼は両手を挙げ、 「こりゃ参った、信じるわ」 「ご理解いただきありがとうございます」 何事もなかったかのように白装束は説明を再開した。 「ただ、獅靖殿が行かれる三国の世界は…武将は全て、」 一旦言葉を切る。 そして、 「女です」 「ほぉ、何故?」 「並行世界」 神吼は頭が痛くなった。 さっきから非現実的なことばかりである。 並行世界、と言えば確か、今自分達がいる世界とは別にある世界。そして、自分達の世界とは決して交わることがない世界。 という、あるかどうかも分からない、モノだ。 (まあ) ここで質問しても話が進まないのでスルーした。 「お分かりいただけましたでしょうか?」
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