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「…ちょっと来い!」
土方は千秋の手を掴んで引きずるように部屋に連れて行く。
「…何するんですか」
部屋に着いた途端に千秋は土方を思い切り睨む。
「人の事をいきなり馬鹿扱いとは…死にたいんですか?」
千秋がそう言って、腰にある一本の刀に手を添える。
「いや…すまなかった…」
土方は顔を引き攣らせ謝る。
―笑顔が恐い…
「…で、何の用です?」
千秋は手を膝に乗せた。
「…お前…まだ安静にしてろって言ったろうが」
「だって…暇だったから…」
「お前の部屋に行ったらいねぇから総司が心配してたんだぞ」
「沖田先生が…」
千秋の目に心配そうにしている沖田の姿が浮かぶ。
―後で謝っておこ
「柿村、芹沢にはきをつけろ」
土方の表情が変わり、そう言う。
「…何故ですか?」
「芹沢は危険だ。勘が良いお前なら分かるだろ」
「………」
千秋はさっきの芹沢と側にいた男達を思い出す。土方の様子だとロクな奴じゃないのだろう。
「…本当は合わせたくなかったんだかな…」
最後にポツリと言った土方の呟きは千秋には聞こえなかった。
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