芹沢鴨の帰還

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「しかし、いい者が手に入りましたな。芹沢先生」 千秋が出て行った後、新見が口を開く。 「うむ。あれをうまく使えば、土方のいい脅しになる」 芹沢は持っていた扇をバッと開く。 「近藤は甘いからいいが…問題は土方だ」 憎々しいように虚空を睨みつけると、開いていた扇を今度はパチンと閉めた。 「全ては明日だ…」 二人は後に、この判断を悔いる事になる。 二人は気付いてなかった。千秋が出て行く時にニヤリと笑ったのを…… 次の日 「千秋君を芹沢先生の小姓に…?」 芹沢は近藤に千秋を自分の小姓にする事を伝えた。 「あぁ…」 芹沢は大きく頷く。 「何故急に…?」 「あれは中々礼儀がなってる。気に入った」 土方は険しく顔をしかめた。 ―あいつに礼儀がなってるだと…?有り得ねぇ… 土方、考える事はそこなのか? 「しかし…」 今だに渋る近藤。そこへ… 「近藤局長、やらせてください」 千秋が襖を静かに開けて入って来た。 「千秋君…」 「お願いします」 千秋の真っ直ぐな眼差しに圧された近藤は渋々、 「…分かった」 了解した。 「…話はこれでいいですか?」 「…あぁ…行くぞ、新見」 「はい」 芹沢と新見は部屋から出て行った。
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