千秋、初めての小姓

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―ヒョイ 「!」 千秋は芹沢が振り下ろした扇をいとも簡単に避ける。 芹沢は再び振り下ろす。 ―ブンッ ―ヒョイ ―ブンッ ―ヒョイ 同じ動作を繰り返す。焦れた芹沢は、 「何故避ける?」 と、千秋を睨みつける。 「だって…そんな鉄扇が当たったら痛いじゃないですか」 「…気付いていたのか」 芹沢が舌打ちをした。 「フフ…この僕が気付かないとでも…?」 千秋は怪しく笑う。 「…もういい、女中に茶を頼め!」 芹沢がそう吐き捨てると、千秋が眉を寄せる。 「嫌です。僕が煎れます」 「お前のじゃ飲めないだろ!」 すると、千秋は、 「知ってます?僕って結構負けず嫌いなんですよ」 ニーッと笑いながら言った。 「さて、作り直しですが…。煎れ方を教えてくれませんかねぇ?山崎さん」 「チッ、気ぃ付いてたか。今度は上手くいったと思ってたのに」 山崎が舌打ち混じりに降りてきた。 「まだまだ甘いですねぇ」 千秋が楽しそうに言う。 「で、お茶はどうやって煎れるんですか?」 「お前、茶の煎れ方知らんの?」 「えぇ、その必要はありませんでしたから」
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