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「必要がなかった?」
「はい、何しろ煎れる人がいなかったもので」
千秋は山崎に背を向ける。
「それより、早く教えてください」
「…お茶を煎れるなら、俺より女中のほうが詳しいやろ」
山崎はそう言うと屋根裏に戻ってしまった。
「…別に教えてくれたっていいじゃないですか…」
千秋はそう呟くと、台所へ再び向かった。
「…あ、お菊ちゃんと藤堂先生」
台所には菊と藤堂がいた。
「げっ…千秋…」
「柿村様!」
「『げっ』て何ですか?」
千秋は藤堂にとびっきり黒い笑顔を向ける。
「…いや…その…」
「ところで、二人で何やってたんですか?」
千秋は二人を見る。二人は台所で仲良く包丁を持っていた。
「平助さんに料理を手伝ってもらってたんです」
菊が答える。それを聞いた千秋は驚く。
「…平助さん…?」
「あ!いえ、藤堂様です!!!」
菊は慌てて訂正する。その様子を見た千秋はクスッと笑う。
「いいですよ。気にせず、普通にしてください。寧ろ呼び捨てやあだ名でも…平ちゃんとか…」
藤堂と菊は揃って顔を赤くせる。
―面白い…
千秋は必死で笑いを堪えてる。
「そ、それより、何の用なの!?!?」
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