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隊士達が出て行った後、数分して千秋も出て行こうとする。しかし、誰かに呼び止められた。
「…あの…」
呼び止めたのは水を持ってきてくれた女の人だった。
「…?はい?」
「ありがとうございました!」
その女の人はいきなり、頭を下げる。
「えぇ!?ちょっ…何の事ですか?」
「店を守っていただいた事です」
「あぁ、別にいいですよ。こちらが悪いし…」
「しかし、何かお礼を…」
千秋は顎に手をあてて考えていたが、やがて、顔をあげる。
「じゃあ、貴女とこの店の名前を教えてください」
「え?…この店は『秋桜』で私の名前は…雪です」
「雪さん、ですか。僕は柿村千秋です」
そう答えると、雪が千秋の顔をまじまじと見る。
「…なんですか?」
「あの…さっきから気になってたんですけど…千秋さん、女の人ですよね?なんで袴なんですか?」
「なんで分かったんですか?」
「いえ…なんとなく…」
―女の勘って恐ろしい…
自分の事を棚に上げて思う。
「…私が女という事は秘密ですよ?」
「あ…はい、分かりました…」
「じゃあ、私、そろそろ行きますね?また来ますから」
千秋がそう言うと、雪は嬉しそうに頷く。
「はい!何時でもお越しください!!」
雪は満面の笑みで言った。
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