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千秋は屯所に帰る途中だ。行きと違う事は…、
「今日もいい天気ですね~♪」
かなりご機嫌である。もう夕方で日は西に傾いていた。
「~♪~♪♪~」
呑気に鼻歌まで歌っている。
しかし、橋の途中で止まる。
「…さっきから何ですか?こそこそしてないで、出て来てください」
ご機嫌だったのが不機嫌になる。
「アハ♪気付かれちゃった?」
出てきたのは派手な着物を着た…
「吉田さん…」
「名前、覚えててくれたんだ?」
吉田稔麿だった。
千秋は身構える。
「そんなに警戒しないでよ」
正直、千秋は稔麿の正体はよく分からない。しかし、なんとなく雰囲気がただ者じゃない事が読み取れた。
「…私に何の用ですか?」
「ん~、たまたま歩いてたら、千秋ちゃんを見付けただけなんけどね」
「じゃ、用はないんですね?帰ります」
千秋は稔麿を残して帰ろうとするが、
「あ、待ってよ!」
腕を捕まれた。
「…ッ…」
千秋の顔が歪む。稔麿は怪訝そうに眉を寄せ、千秋の袖を捲る。
「…どうしたの?これ」
「……」
千秋の白く、細い腕には、赤い血が傷口から垂れていた。
芹沢が振り回した刀が千秋の腕を掠めていたのだ。
―ポタ
血が一滴、地面に落ちる。
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