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「ふぅ、やっと着いた」
稔麿は『寺田屋』という建物の前で止まる。
「…千秋、大丈夫?」
「…心配するなら降ろしてください」
「まだダメ。降ろしたら逃げそうだもん」
「当たり前です」
「…………」
稔麿はそのまま建物の中に入る。
「お登勢さーん!いるー?」
すると、奥の方から一人の女性が出て来た。
「はいはい、いますよ。どうしましたか?…あら、その子は?」
その女の人は千秋を見て不思議がる。
「…僕は「柿村千秋ちゃん。一応、女の子だよ♪」」
千秋は稔麿を睨む。
「なんで女ってばらすんですか」
「お登勢さん、千秋、怪我してるんだ。手当てよろしく」
「あらあら、大変ねぇ。じゃあ2階に上がってて頂戴」
稔麿は千秋を抱えたまま 階段を上がる。そして、一つの部屋に入って千秋を降ろす。
「じゃ、大人しく待っててね」
そう言って部屋から出て行こうとする稔麿を、千秋が呼び止める。
「待ってください。吉田さ「稔麿って呼んで」」
「吉「稔麿」」
「…稔麿さ「さんもいらない」」
―強引……
「…稔麿…」
「ん、よく出来ました」
稔麿はそう言うとニコッと笑った。
「…稔麿は何処行くんですか?」
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