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「仲間に君の事を話しに行くの」
稔麿は手を振りながら出て行った。
「仲間…?」
しばらくするとお登勢が来る。
「千秋ちゃん?怪我、手当てしに来たよ」
「あ、はい、ありがとうございます。…えっと…」
「あぁ、私の名前はお登勢。此処、寺田屋の女将をやってるの」
「改めて、柿村千秋です。…あの、手当てくらいなら自分で出来ます」
「ダーメ!怪我人は大人しくしてなさい。ほら傷口出して」
千秋は渋々、怪我した左の腕を出す。
「あら、これ結構深いわ。しばらく動かさない方がいいみたいね」
お登勢はテキパキと消毒し、包帯を巻く。
「はい、終わり」
「ありがとうございます」
千秋はお登勢に頭を下げた。その時、
―ガラッ
「よぉ、お登勢。ちょっと……お前は…」
男が入って来た。男は千秋を見て、目を丸くする。
「…なんですか…?」
「…お前、名前は?」
千秋は少しムッとして、
「尋ねる前に先に名乗ったらどうですか?」
「…俺は高杉晋作だ」
高杉は早く名乗れと目で言う。
「…私は柿村千秋です」
千秋は少し不愉快そうに名乗る。
「…お登勢、少し席はずしてくれ」
お登勢は無言で頷いて部屋を出た。
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