千秋の影

6/6
前へ
/205ページ
次へ
自分を呼んでたのは、沖田だった。 「千秋さん、何処にいたんですか?芹沢先生は帰ってきたのに、千秋さんはいないから…」 沖田は眉を寄せて言う。 「…すいません。ちょっと野暮用があって…」 「野暮用って……!」 沖田は千秋の左腕を掴む。 「…痛っ!…」 「…はぁ、あれほど無茶はするなって言ったのに…」 「…あはは…」 沖田は千秋の怪我を目敏く見付けたのだ。 「でも、これくらい大丈夫ですよ。ちゃんと手当てしたし」 「…………」 千秋をじっと見つめる。 「…総司さん?」 「…なんでもありません。さ、屯所に帰りましょう。土方さんが待ってますよ」 沖田はいつもの笑顔になり、そう言う。 「あ~…そうでしたね」 土方の仕事を思い出した千秋は、顔をしかめる。 「じゃあ、行きましょう」 二人は屯所に向かって歩き出した。 ―あれ?おみのさんの仲間っていう事は、稔麿や高杉は長州藩? 今頃になって気付いた千秋だった。
/205ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3777人が本棚に入れています
本棚に追加