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「…はぁ~…やっぱりね」
沖田はため息と共に言う。
「『やっぱり』とは?」
「最近、寝てないんですよ。屯所ではぐっすりだったのに、途中の宿屋では寝なくなったんです」
「寝なくなった…?」
「はい、まるで何かを警戒してるように…」
千秋を心配そうに見る。
「…女子だから体力なんてあまりないでしょうに…」
「…ふむ、そうだったのか」
斎藤はしばらく考える仕草をし、ふと顔をあげ、
「なら、先に宿で休ませるか」
無表情に言う。
「そうしたい所ですが、芹沢さんが何て言うか…」
「…わしがどうかしたか?」
沖田の後ろに芹沢が立っていた。
「びっくりした!…えと…その、千秋さんが…」
「…柿村が寝てしまったのか…。まぁ最近、寝付けなかったようだったから仕方がなかろう」
―気付いていた…やはり、油断なりませんね…
「宿をとるから休ませてやれ。沖田が見ていろ」
「え?良いんですか?」
「そんな柿村を背負って犯人探しが出来るか」
芹沢は扇いでいた扇を閉じる。
「…分かりました。ありがとうございます。…芹沢さんって優しいんですね」
沖田が笑顔で言ったので、芹沢が沖田を睨む。
「…フン…わしに優しいなんて言うのは、沖田か柿村ぐらいだ…」
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