大阪―影―

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沖田は千秋を部屋に寝かせ、宿の主人に礼を言った。 「突然にすいませんでした」 「大丈夫ですよ。ゆっくりしていってください」 宿の主人はニッコリ笑うと、奥へ引っ込んでしまった。 「…千秋さんの様子でも見に行きましょうか」 2階に上がると、 「いやぁぁぁあああ!!!!!」 千秋の悲鳴が聞こえた。 「千秋さん!?」 沖田は急いで襖を開け、千秋に駆け寄る。 「いやだ!あいつが!」 千秋は酷く怯えて錯乱していた。 「千秋さん!しっかりしてください!」 千秋がこちらを見る。 「来るなぁ!お前が!あたしの!」 ―誰かと間違えている…? 千秋の瞳は恐怖と怒りで揺れていた。 「あたしが…殺した!」 ―殺した?おみのさんの事か…? 「大丈夫です!おみのさんはいません!」 しかし、それが逆効果だった。 「来るなぁぁあ!!!」 千秋は沖田を突き飛ばし、そこらにあった物を手当たり次第に投げる。 「来るなぁ!消えろ!」 沖田は飛んで来る物をかわしながら千秋に歩み寄る。 「千秋さん!私です!総司です!」 千秋のすぐ傍に寄った後、すぐに千秋を抱きしめる。 「…ッ…」 沖田は腕の中で暴れる千秋に頬を引っ掛かれる。 ーーーツゥ 血が頬をつたう。
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