大阪―影―

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―ガシャン! 何処かで何かが割れた音がした。 「貴様!我等が壬生浪士組と知って逆らうのか」 音に続く怒鳴り声。 「…どうやら」 「お出ましのよう…」 「…だな」 上から順に千秋、沖田、斎藤の雰囲気がガラッと変わる。 「…取り合えず、行ってみよう」 「…もうこれ以上金が貸せませんわ…ご勘弁を…」 「何を言う!この大阪が平和なのは誰のお陰だ!」 一軒の店に人だかりが出来ている。 「何の騒ぎですか!?」 沖田がそこらにいた町人に尋ねる。 「壬生狼の強請や。相変わらず、非道な事を…」 大阪の町人達は口々に悪口を言う。 「…沖田先生…どうしますか?」 「止めたいところですが……」 沖田は悔しそうに拳を握る。ここで自分達が壬生浪とバレたら、芹沢達と別れた意味が無い。 その時、 「しかし、いくら活動資金やとしても百両は…」 「黙れ!!用意が出来ぬのならば斬る!」 いつまでも貸そうとしない店の主人に焦れた、三人の強請の一人が刀を抜き振り上げた。 ―危ない…! 頭で考えるより体が先に動いていた。 ―キィン! 「!何奴だ!?」 「危ないじゃないですか…こんな公衆の面前で刀を振り回しちゃ…」 強請の太刀を受け止めた千秋は余裕そうに怪しく笑う。 「質問に答えろ!小僧!」
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