梅の花

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場所が変わって台所。 「沖田さん、湯呑みを取ってください」 「はいはい」 四つの湯呑みが手渡される。 「お梅さんと芹沢先生はどのような間柄で?」 梅と初めて会った千秋は、疑問を沖田にぶつけた。 「一応恋仲ですね」 「一応ですか」 千秋の指摘に苦笑する。 「…まぁ、なにしろ芹沢先生がお梅さんを無理矢理奪いましたからね…」 「奪った?」 眉をひそめる千秋に沖田が慌てて口を塞ぐ。 「いえ…その…」 バツが悪そうに口を紡ぐ沖田。 そんな沖田をじっと見詰めると、観念したように口を開いた。 「…お梅さんは元々、お金を借りていた商人の正妻だったんです だけど、芹沢先生に目を付けられて… 今は恋仲のようですけどね」 「…そうですか」 意外に大人しい千秋。 普段ならそれに怒って芹沢を張り倒しに行くはずだが…。 「…珍しく大人しいですね」 「…他人の事情に口を挟むほど子供じゃありませんよ」
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