予兆

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呼ばれて振り返ると鬼…いや、鬼のような顔が。 「お前…今日は仕事じゃなかったか?」 「あっ!…す、すいません!!」 巡回をすっかり忘れてた藤堂は急いで回れ右をし、走って行った。 「…山崎」 誰もいなくなったとこで監察を呼ぶ。 周りから見ればかなり痛い人だが、幸いなことに周りに人はいない。 「はいな」 そして、山崎がどこからともなく現れた。 「言いたい事は分かってるな?」 「嫌やトッシー、俺は万能じゃないんやで? 言いたい事は言ってくれへんと それともなんや? トッシーと俺の間柄には言葉はいらない…」 「うっせぇ!黙れ!! いいから早くいけ!! あと、トッシーって呼ぶな!!」 山崎の長ったらしい言葉を途中で遮り叫ぶ土方。 すこし酷なようだが、さすが山崎。 土方の言いたい事が最初から分かっていたようだ。 「分かった分かった そんな怒鳴らんといて 千秋ちゃんやろ? あの子、気配に敏感やからすぐにばれてしまうで? それでもええんか?」 渋い顔で言う山崎。 土方は頷いたあとに付け足す。 「別にばれても良い 堂々と見張ってろ」 「まぁ頑張ってみるわ」 そんじゃと手を振り、山崎は屋根裏に消える。 「…ったく、これから忙しくなるってのに…」 土方の呟きは今度こそ誰にも聞かれなかった。
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