予兆

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「そこの者」 「なんですか?」 普通の町人を装って返事をする。 浪人は一枚の紙を持っていて、その紙と山崎を交互に見た。 「この紙に書いてあるのはお主か?」 「…は?」 浪人から紙を奪い取り見る。 そこには…。 『兄を探しています。 父も母も死んでしまい妹である私と兄が取り残され、自分が働かなければと、二年前に一人上京しました。 今でも仕送りが届きますが結構な金額ゆえ、私も兄の傍らで働こうと思いましたが、肝心の兄がどこにいるのか分かりません。 心当たりのある方はご連絡ください』 と、書かれており、その下には山崎の似顔絵があった。 それも細かい所まで似ている為、一発で山崎とわかる。 「な…なんやこれ!?」 「お主は良い兄だな たった一人で妹の為に働くなんて」 「え!?や、あの…」 急いで違うと言おうとする山崎だが、浪人はまったく聞く耳を持たない。 「さあ!早く妹君の元へ行きましょう!」 「だから話を…!」 誤解が解けたのは、しばらくたってからの事だった。
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