女中さんと千秋

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「…いいのか?」 土方が目を丸くする。そして、訝しむように千秋をみる。 「…何ですか?別に何も企んでませんよ」 千秋はニヤリと笑いながら言う。 「…怪しい…」 「本当にいいんですか?千秋さん」 沖田は心配するように言う。 「大丈夫です。疑いを晴らすには手早い方法ですから」 「…いい度胸じゃねぇか…」 「…それより私、もう一つだけ聞きたい事があるんですけど」 「…なんだ?」 千秋は土方の前まで来て、 「おみのという女中の事なんですけど…」 そう言った。すると、土方が眉の片方を上げて言う。 「おみのがどうした」 「あの人、普通の女中じゃありませんね」 土方は鼻で笑う。 「ふっ、もうバレちまったか。おみのもまだまだだな」 「どういう事です?」 千秋が土方の態度をみて、眉をよせる。 「おみのさんは女中とは仮の姿、実は監察方なんです」 沖田は人差し指を上げて説明する。 「…本当にそれだけですか?」 「…他になんかあるんか?」 山崎は千秋に尋ねる。千秋は、しばらく考えていたが、何でもないように笑顔になる。 「いえ、思い違いでした」 「用はそれだけか?」 土方が千秋を軽く睨む。 「はい、お騒がせしました」 それに対して千秋はニッコリ笑ってから部屋を出た。
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