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千秋がしばらく男を見ていたが、やがて口を開く。
「誰ですか?」
直後、千秋の後ろからこけたような音がした。
「…何をふざけてるんですか?おみのさん」
千秋の冷めた視線を感じながら、おみのは起き上がる。
「ふざけてるのはあんたでしょ!?何んだったのよ!?さっきのは!?」
「ん~…雰囲気的に?ですかね」
千秋の返答に、とうとうおみのがキレる。
「あんた……」
「俺を無視すんな!!甘味屋で会っただろう!」
男が声を荒げる。
千秋はしばらく思案していたが、やがて、
「あぁ、あの時の、『謝る事に対して嫌な思い出がある』人ですか」
と、思い出したように言う。
「って、それどんな人ぉ!?」
「うるさいですねぇ。いちいち野郎の事なんて、覚えてられませんよ」
千秋は笑顔で淡々と述べる。
「俺の名前は中田巻之助だ!」
「はいはい。で?何の用ですか?この前の仕返しですか?手も足も出なかったのに?」
千秋を睨む中田は、
「この前はたまたま一人だったからだ!いくら何でもこの人数に勝てると思ってるのか?それに…」
ニヤリと笑い、おみのを見て、言葉を継ごうする。が、
「おみのさんを人質に?止めた方がいいですよ…こんな狂暴…コホン。この人を甘く見ない方が身のためですよ」
「こら待て、あんた今何を言おうと…?」
おみのが千秋を睨む。
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