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「雨が強くなってきたな」
「…そうですね…」
永倉の呟きに沖田が賛同する。
二人は今、走っている。目的はおみの暗殺…
しばらくすると、前方から人が来る気配がする。
「…永倉さん……」
「…分かってる……」
永倉と沖田は刀に手を付ける。
こんな時間にいるのはたいてい、壬生浪士組を狙った攘夷志士だ。
「……!」
しかし、沖田と永倉の当ては外れた。
「「千秋(さん)!?」」
「…あ、永倉先生と沖田先生じゃないですか。どうしたんですか?こんな雨の夜に」
前方から歩いて来たのはびしょ濡れの千秋だった。
「千秋さんこそどうしたんですか!?傘もささないで!」
沖田と永倉が千秋に近寄る。
「散歩みたいな?」
千秋は腕を組みながら首を傾げる。
「散歩って…お前なぁ」
永倉が呆れながらため息をつく。そして、千秋の腰をみて、気が付く。
「千秋、お前…脇差しは?」
「置いてきました」
「置いてきたって…どこにですか?」
「…さぁ?どこでしょう?」
千秋は首を傾げながら永倉を見る。
「いや、俺に聞くな」
「それより、沖田先生と永倉先生は何処へ?」
千秋は話を逸らす。
「…夜の巡察です」
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