3777人が本棚に入れています
本棚に追加
/205ページ
「二人だけですか?」
千秋がいつもの笑顔で尋ねてくる。
「はい。どうせこの雨ですし、今夜は攘夷志士なんて出ないでしょうから」
沖田もいつもの笑顔で返す。
「…そうですか。それなら私は邪魔ですよね。帰ります」
千秋が沖田と永倉の間を通る。
「……!」
「…では、お気をつけて」
「おう、千秋も熱出さないように、さっさと帰ろよ」
永倉の言葉にニコッと笑って、行ってしまった。
「…総司?…どうした?」
「…いえ、何でもありません。行きましょう」
―気のせいでしょうか…?
しばらくすると、あの匂いがしてくる。
「…総司、この匂いは…」
忘れもしない、この生臭い鉄の匂い…。
「…えぇ、恐らく誰かが斬られたのでしょう…急ぎますよ」
二人は加速する。そして、見た物は……。
「…これは…!」
「…おみのじゃねぇか!」
二人が見たのは血塗れの、息が絶えたおみのだった。
「…この脇差し…」
沖田はそこに残っていた血塗れの脇差しを拾う。
「…その脇差しがどうしたのか?」
永倉が覗き込むように見る。
「…いぇ。それより、この事はどうしますか?」
沖田は血塗れの脇差しの血を懐紙で拭く。
最初のコメントを投稿しよう!