事件後

2/10

3777人が本棚に入れています
本棚に追加
/205ページ
次の朝、既におみのが殺されたという話が出回っていた。 「知ってるか?女中の一人が昨日の夜に殺されたんだと」 二人の平隊士が沖田の部屋の前で話していた。 「知ってる知ってる。名前は確か、おみのだったか?」 「そうなのか!?あの美人が……」 「長州藩士にやられたらしい…」 「……気の毒だな…柿村も…」 「あの新人隊士になんか関係あるのか?」 「知らねぇのか?最近、仲が良かったから、二人共できたんじゃねぇかって、有名だぜ?この話」 「そうなのか。それはまた…」 そう言いながら二人は行ってしまった。 「……………」 千秋が部屋の中にいるとも知らずに。 しかし、それも仕方がないだろう。千秋は気配を消しているからだ。恐らく、山崎でも気付かないだろう。 「………」 千秋は部屋の隅で膝を抱えて、ジッと虚空を見つめていた。 ―気の毒か… 自嘲気味に笑う。 ―隊の中ではそんなに仲良く見えたのだろうか…? ―あの人を斬ったのは私なのに… ―…そういえば、最後に何かを伝えようとしてたな 千秋は最後の瞬間を思い出す。 『…た…す……ま…き…つ…ろ』 ―…最後のほうは『きをつけろ』か…何に?…否、誰に…? 千秋はそこでため息をつく。
/205ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3777人が本棚に入れています
本棚に追加