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次の朝、既におみのが殺されたという話が出回っていた。
「知ってるか?女中の一人が昨日の夜に殺されたんだと」
二人の平隊士が沖田の部屋の前で話していた。
「知ってる知ってる。名前は確か、おみのだったか?」
「そうなのか!?あの美人が……」
「長州藩士にやられたらしい…」
「……気の毒だな…柿村も…」
「あの新人隊士になんか関係あるのか?」
「知らねぇのか?最近、仲が良かったから、二人共できたんじゃねぇかって、有名だぜ?この話」
「そうなのか。それはまた…」
そう言いながら二人は行ってしまった。
「……………」
千秋が部屋の中にいるとも知らずに。
しかし、それも仕方がないだろう。千秋は気配を消しているからだ。恐らく、山崎でも気付かないだろう。
「………」
千秋は部屋の隅で膝を抱えて、ジッと虚空を見つめていた。
―気の毒か…
自嘲気味に笑う。
―隊の中ではそんなに仲良く見えたのだろうか…?
―あの人を斬ったのは私なのに…
―…そういえば、最後に何かを伝えようとしてたな
千秋は最後の瞬間を思い出す。
『…た…す……ま…き…つ…ろ』
―…最後のほうは『きをつけろ』か…何に?…否、誰に…?
千秋はそこでため息をつく。
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