目覚め

3/8

3777人が本棚に入れています
本棚に追加
/205ページ
―ここ、何処…? 暗い暗い闇の中、足元は水浸し。歩く度にパシャッとなる。 ―歩きづらい… しばらく歩いていると、人の気配がする。 「…誰…?」 『誰は酷いじゃない…千秋?』 千秋は顔は見えないが、声を聞いただけで分かってしまった。 「…母様…?」 『そうよ、貴女の母よ』 途端に周りが明るんでいく。 「…何?…血…?」 足元の水は血の海だった。千秋は周りを見る。 『『…千秋…』』 「…父様…母様…」 千秋の目は見開かれる。目の前にいた自分の両親は血塗れだっから。 『…何故…あの時、早く来てくれなかったの…?』 母親が手を伸ばしてくる。 「…………」 千秋は一歩、下がる。しかし、背後から人の気配がする。 ―バッ すぐさま、後ろを振り向く。そこにいたのは、さっきまで母親の隣にいたはずの父親だった。 『お前が…早く来てくれれば……』 千秋は血塗れの両親に挟まれる。 「…やめて…」 千秋は耳を塞ぐが、声はお構いなしに頭に響く。 『『私達は…死ななかった…』』
/205ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3777人が本棚に入れています
本棚に追加