3777人が本棚に入れています
本棚に追加
/205ページ
―ここ、何処…?
暗い暗い闇の中、足元は水浸し。歩く度にパシャッとなる。
―歩きづらい…
しばらく歩いていると、人の気配がする。
「…誰…?」
『誰は酷いじゃない…千秋?』
千秋は顔は見えないが、声を聞いただけで分かってしまった。
「…母様…?」
『そうよ、貴女の母よ』
途端に周りが明るんでいく。
「…何?…血…?」
足元の水は血の海だった。千秋は周りを見る。
『『…千秋…』』
「…父様…母様…」
千秋の目は見開かれる。目の前にいた自分の両親は血塗れだっから。
『…何故…あの時、早く来てくれなかったの…?』
母親が手を伸ばしてくる。
「…………」
千秋は一歩、下がる。しかし、背後から人の気配がする。
―バッ
すぐさま、後ろを振り向く。そこにいたのは、さっきまで母親の隣にいたはずの父親だった。
『お前が…早く来てくれれば……』
千秋は血塗れの両親に挟まれる。
「…やめて…」
千秋は耳を塞ぐが、声はお構いなしに頭に響く。
『『私達は…死ななかった…』』
最初のコメントを投稿しよう!