八木藍の章【悪魔の右目】

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7年前の12月11日…その日は珍しく朝から雪が降っていた。   家を出るとき、母も『数年ぶりだ』と言って懐かしがっていた。   僕が住んでいるのは瀬戸内海に浮かぶ、大横島と言う小さな島の中の田舎町。     ポツポツと降る雪は地熱により地面に触れるとすぐに溶け、漫画やアニメのように積もりはしなかった。   溶けた雪は水となって土と混じり合り、人の足が道を汚く染めた。     「………………。」     いつもと同じ町と道…だけど今だけは違う町と道。   見上げれば白い粒 見下げれば汚い道   足を踏み出せばグチャっといやらし音と共に自分の足跡がそこに出来上がる。     「………………。」     立ち止まって振り返ると、今までそうやって歩いてきた自分の足跡がそこにある   道の両脇は水抜きされた田んぼがずっと続き、各田んぼの真ん中辺りには壊れかけた案山子達が寂しそうに揺れていた。     「……………ッ。」     揺れている案山子を見ていたら、なぜか右目の奥がシクシク痛み始めた。
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