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「ごめんって!それよりさ、ちょっと遠くまで運んでくれよ!」
『ぬ?遠出か?』
「家出だ」
『家出、か…。我も若い頃よくやったものだ。よし、送ってやろう』
イスヴァールは懐かしむように承知する。
…てか、竜が家出って……家と呼べるものあるのか?というか呼べる物に住んでるのか?
僕がぼんやりそんな事を考えていると、いつの間にかガイルはイスヴァールの背に乗っていた。
「ティア!じゃあな!!」
ガイルが左手を上げると、イスヴァールは飛び立ち、一声盛大に雄叫びを上げると、物凄い勢いで北東の方角へ飛んで行った。
段々小さくなっていくガイルに手を振り、僕は小さなため息を吐く。
「………………目立つなぁ…」
家出ってもっと隠密的にやるもんじゃないの?
イスヴァールで飛んで行ったから空を見た市民が騒ぐ気配はするし、雄叫びのお陰でシグ家の庭にラグ家のガイルの召喚獣が出た事も既に城内に知れ渡って居るだろう。
と、いう事は……
「お祖父様に怒られる…」
「ラグ家の者などと仲良くしおって…!」が口癖の我が祖父の説教は、始まったら三時間は止まらない。
それに、今日は横からフォローしてくれる親父達も地方へ出向いていていない。
……仕方ない。
「……僕も旅に出るか」
もう説教はこりごりだ。お見合いとか余計な話まで出てくるし。
しばらく外出していた事にして、ガイルとは会っていないとシラをきろう。
説教があったとしても、確固たる証拠がなければ時間は短くなる筈だ。
そんなわけで、結局僕も行くことになってしまった。
ガイルめ、計算してやったのか?
だとしたらとんだ食わせものだが、奴は残念ながら馬鹿だからこんな計算なんて出来ないだろう。
天然とは恐ろしいね。
そう思いながら僕は騒がしくなってきた城内を足早に歩き、自室に戻った。
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