第一章

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先輩が受け止めてくれた。 「大丈夫か?」 「はい、大丈夫です」 顔を上げると先輩の顔が目の前にあった。 ドクンドクンドクン 心臓がまた、高鳴った。 頬に暖かいものがつたうのがわかった。 私は先輩の腰に手を廻した。 先輩の体が少しビクンッとなるのがわかった。 「美月?」 「少しだけでいいからこのままで居てください」 先輩は何も言わずにただ私を強く抱きしめてくれた。 私は先輩から少し離れた。 「先輩、あのごめんなさい。 先輩の胸が広くて暖かかったから、深い意味はなくて、その・・・・何言ってんだろう。」 あまりにも恥ずかしくてその場を立ち去ろうとした。 すると、 「美月、」 先輩の手を掴み引き寄せて抱きしめた。 どうして???? 「あの、もう一度顔洗ってくる」 そう言ってその場を離れた。 私は顔をなんども洗った。 何て事したんだろう。 でも、これでわかった。私は先輩が好き 優也とは別れよう。 数分後、先輩の元に戻った。 「あの、先輩、ごめんなさい。」 何て言っていいのかわからない。 先輩が呟いた。 「ッキーだったから、」 「えっ?」 「気にしなくて良いよ。俺もラッキーだったから」 「女の子抱きしめたの久しぶりだし」 「・・・・・」 「今のことが大学の奴らにバレたら俺、殺されるかも」 「はい?」 「美月って大学で超人気あるんだぜ、去年の人気投票だって1位だったし」 「人気投票?そんなのがあるの?」 「男どもの間でな」 「そうなんだ」 「美月、何か悩み事あるのか?俺でよかったら相談にのるぞ」 「先輩・・・ありがとう、でも大丈夫です。先輩のお陰で元気でましたから」 「そっか、そんなことならいつでもしてやるぞ」 「えっ」 「じょ、冗談だよ。さっきのは特別だよ。俺の毎日のしごきに耐えてるご褒美だよ。」 「それはそれはありがとうございました。」 ちょっと淋しかったけど私も冗談っぽく答えた。 「美月、今日は15時までに学校行けばいいんだよな。」 「うん」 「悪いけど少し寝てもいいか。」 「帰るなら送っていくけど」 「大丈夫です。ここどの辺ですか?一人で帰ります。」 「送っていくから」 「はい、じゃあ、この辺にデパートか何かありますか?」 「歩いて5分くらいのところにあるよ。」 「わかりました。」 「お前ももう少し寝ておいたほうがいいんじゃないのか。顔色まだ悪いぞ」
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