第二章

10/57
前へ
/148ページ
次へ
「5回手術したの、それでもダメだった。今は半年に一度アメリカに行って治療してる。両親がアメリカの名医を見つけてくれたの、先生は全力で打っても大丈夫って言ってくれた。でも怖い。今度あの痛みが来たらもう二度とバレーが出来なくなるかもしれない」 「そっかあ、じゃあ俺がここに来た意味はないか」 翔は冷たく言い放った。 「美月が自分で克服しない限り前には進めないんだぞ、全日本の選手なんて夢のまた夢だよ。才能があるのに勿体ないと思わないか?強くなれよ、アメリカの先生が大丈夫って言ってくれたんだろう、挑戦してみろよ。逃げるな」 「翔は変わってないね。あの頃のまま、私の気持ちなんて少しも理解してくれなかった。2年前と同じだね。バレーが出来ないって事が私にとって何を意味するのかわかってない。」 「どういう意味だよ」 「もういいよ。これ以上話したくない。ちょっと頭冷やしてくる。先に試合始めてて私の代わりに夏樹入れておいて」 そう言って体育館の外へ走った。 翔は美月が最後に言った一言が気になっていたがとりあえず体育館へと行った。 「ねえ、さっきの美月さんと風間さん見た。」 「うん、珍しいよね。美月さんがあんない怒るなんて、何があったのかなあ」 「だよね。あんな美月さん見たことないよね」 外をランニングしていると後輩たちが美月のことを話しているのが聞こえた。 「美月がどうかしたのか?」 「拓先輩、さっき美月さんと風間さんが体育館の外で言い合いしてたのが聞こえたから、内容はあまり聞こえなかったんだけど美月さんの大きな声が聞こえて、何か怒ってるみたいだったよ。」 「そうか」 「はい、美月さん体育館に戻らないでどこかに行ってました。だから、よっぽど嫌なこと言われたのかなあと思って」 「そうか、お前たち走り終わったら体育館戻ってストレッチしといて」 「はい」 美月何かあったのか? 俺は気になって仕方なかった。 その頃美月は 私だって打ちたいよ。壁をおもいっきり叩いた。 何で私がこんな思いしないといけないの 涙が止まらなかった。 涙を隠すために頭から水を被った。水はとても冷たかった。 その時後ろから声が聞こえた。 「美月」 拓先輩だった。 涙を見られたくなかったから下をむいたままに答えた。
/148ページ

最初のコメントを投稿しよう!

918人が本棚に入れています
本棚に追加