第一章

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「うーん、よく寝た」 えーっ、ここ私の部屋じゃない??? 私は状況が把握出来なかった。 ここ何処?昨日どうしたんだっけ? 私は布団から起き上がった。 すると、 「ヨォ、目覚めたか」 「えっ、拓先輩・・・私?」 「バイト終わって倒れたんだ。 病院連れて行くか迷ったんだけど寝息が聞こえてたから」 「倒れた?ここは?」 「ああ、家に送っていこうか迷ったんだけど、遅かったから、俺のマンションに連れて来た。」 「俺のマンションって?」 「俺、もうすぐここに引っ越すんだ」 私はベッドから出た。 「すみません。ご迷惑掛けてしまったみたいで」 「大丈夫、気にするな、それより大丈夫か?」 「大丈夫です。寝たらすっきりしたみたいです。本当にごめんなさい。」 先輩は私の頭をポンポンと軽く撫でてくれた。 ドキッ 心臓が高鳴るのがわかった。 「拓先輩、もしかして、寝てないんじゃ」 「大丈夫、寝たよ」 「よかった。」 「美月、今日授業は?」 「今日は、3限目からだけど、代返頼むからサークルだけ行けばいいです。」 「そうか、俺は休講だから、15時位に行けばいいから」 「そうですか、あの、洗面所借りていいですか?」 「いいよ」 私は顔を洗うために洗面所に行ったけど洗うのを止めた。 「どうした?洗わないのか?」 「あ、うん、やっぱり帰ってから洗います。」 「どうして?」 「どうしてって、顔洗ったらすっぴんになるから」 「女ってのは大変だなあ、でも、美月って化粧してるんだ。」 「うっ、一応はしてますけど」 「気にするな、美月のすっぴんは毎日のように見てる」 「えっ、」 「サークルが終わったあとはほぼすっぴんのようなもんだろう」 「そう言われてみればそうですね。」 「それに、すっぴん見ても笑ったりしねえよ。だから気にしないで洗って来いよ」 「はい」 私は顔を洗った。 洗い終わると、先輩は私の顔をジーッと見つめた。 反射的に顔をタオルで隠した。 「大丈夫だよ。さっきとほとんど変わってないよ。かわいいよ」 ドクンドクンドクン また、心臓が悲鳴を上げた。 私は後ろを向いた。 「どうしたんだ。」 「何でもない。」 「何でもないって感じじゃねえけど」 「先輩が茶化すから」 「茶化してなんかいないよ。そのままでも十分いけるよ。美月って大学内で男に人気あるんだぜ」 「まさか、冗談でしょう」 「うん、冗談」 「もうーっ、」 私は先輩を追いかけようとしてつまづいた。
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