序章 小さな魔術師

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  ラヴィーンは、ヴァレリア大陸の北東部に位置する小さな村である。 山あいの狭い平野を切り開いた村は、かつて南西にあった鉱山街に農産物を供給していた。 しかし、大規模な落盤事故で鉱山が閉鎖されると、鉱夫らはみな街を去っていき、ラヴィーン村のお得意さまは廃虚と化した。 他に近隣の街や村がなかったことから、ラヴィーン村は山と森に囲まれた辺境の地で孤立することとなる。 何組かの家族は村を捨て、ガーベージ湖のほとりにあるクロトの街へと移り住んだ。 だが、多くの村人はこの地に残ることを選んだ。 心血を注いで育てた畑を捨てられなかった者。 都会へ出て、一からやり直す自信が持てなかった者。 すでに高齢を迎えていて、この地に骨を埋める覚悟を決めた者。 その理由は、様々である。 だが、その先に待ち受ける未来を知り得たなら、村人はみなクロトの街へ移り住む決意をしたに違いない。  
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