追われる者

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 暗く、僅かに差し込む太陽の光は頼りなく森を照らす。  陽の光を遮るように高く、鬱蒼と樹木が生い茂る森の中。  ひたすらに、ただ、逃げていた。宛てもなく、此処が何処かも分からない。  自分の後方、追い掛けて来る者がいる。常人では有り得ない疾さで疾走していることは自覚している。それでも、その疾さについて来る追跡者にちらと目を向ける。  銀色に鈍く光る甲冑を身に纏い、顔を覆う面頬を付け、腰には剣がさしてある。そして、銀色の甲冑の胸当て部分には大きな赤い十字架の印があった。  教会の騎士が追って来ていた。  まだ引き剥がすことが出来ていないのかと思い、軽く舌打ちする。前を向くと、遠くに常人では見つけることが出来ないほどの小さな明かりを見付ける。  そろそろ森の出口も近い。後ろにいる騎士を何とかしなければ、森を出たところで仲間を呼ばれるかもしれない。  また軽く舌打ちをして、逃げていた――黒に近い深紅の髪に切れ長の鮮やかな深紅の瞳、細身の長身の男は、身体にブレーキをかけ、騎士の方に振り返る。  僅かな光の中、その紅い眼を煌めかせ騎士を見据える。  
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