40人が本棚に入れています
本棚に追加
男は屈み込むと片手を落ち葉が覆い隠す地面に触れさせる。すると、男の手が触れている所――森の土に幾何学的な模様の円が浮かび上がり、広がる。
それは、《錬金術》で使用する《錬成陣》だった。
錬成陣が輝きを放つ。薄暗い森の中ではまばゆいほどの光がほとばしり、突如騎士の周りに土の壁が出来上がる。騎士は土の壁に閉じ込められ、見えなくなってしまった。
男はそれを見ると一息つく。
男が使ったのはこの世界で《錬金術》と呼ばれる特殊な力だった。錬金術はその物質の構成――例えば、その物質を形作っている元素などを理解し、それを《錬成陣》と呼ばれる物質の分解、再構築を記した陣に表し、元の物質を理解し、分解し、別のモノに再構築する力だ。
錬金術を行使するにはあらかじめその物質に対する錬成陣を用意していなければならない。錬金術は、その錬成陣に錬成する物質に見合った正しい衝撃を与える事で錬金術は発動するのだ。
だから、普通は男のような錬金術の行使は不可能なのだ。
男は自分で錬成した、そびえ立つ土の壁を一瞥し、その場を立ち去った。
最初のコメントを投稿しよう!