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優秀な錬金術士はそれらのことは当然ながら、知っていた。が、人体錬成を行うことに戸惑いは無かった。
そして、禁忌の人体錬成は成功した、いや――成功してしまった。
錬金術の発動の代償に、錬金術士の命を奪って。
そうして、男は生まれた。この世界でただ一人の、人造人間(ホムンクルス)として。
男は造られた時から知識を持っていた。その知識は、錬金術士のものだった。
見た目は人間のそれと変わりなく、だが自然では有り得ない紅い髪と瞳を持っていた。そして、人間では有り得ない身体能力、物質に対する錬成陣無しでの錬金術発動など、特別な力を持っていた。
男の存在は直ぐに教会に知られ命を狙われるようになった。そして教会によって犯罪者に仕立てあげられ、賞金稼ぎにも追われるようになった。
そのような状況が造られた時から何年も続いた。
それでも男は人間に恨みを持つことも、また憎しみを持つこともなかった。
それを、当たり前だと思っていたから。自分の命が狙われるのは当然であり、おかしい事ではない。そう、思っていたから。
自分がいたら迷惑がかかる。男はそう思い、人と関わらなかった。
だから、生まれた時からずっと一人だった。ずっと逃げ続けていた。
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