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冷たく、暗く。暖かな陽の光が差し込むことのない、冷酷な石造りの地下牢に足音が響く。
響く足音に身をすくませ、とうとう最期の時が来てしまったのだと悟る。
俯き震えていると、寂れた金属どうしが擦り合う嫌な音が響き、上から男の冷たい声が降りてくる。
「時間だ。出ろ」
地下牢に捕らえられていた、黒髪黒目の美しい、とは違うかわいらしい小柄な少女は、震えた声で返事をする。
小さな牢の出入口から出ると目隠しをされる。さらに手に縄を巻かれ、体にも縄を巻かれる。その状態で縄に引っ張られる様に、少女は死の祭壇へと連れて行かれた。
何処まで連れてこられたか分からない。もう随分と歩いた気もするし、まだ少ししか歩いてない気もする。これから殺されてしまうという絶対的な恐怖のなか、時間の、いや――それ以外の感覚も狂ってしまった。自分の身体には感覚器が本当に付いているのか。それすら疑わしくなるほどに。
しばらくして、突然引っ張られる感覚が無くなったと思うと雑な手つきで目隠しを外される。
いきなりの事に驚き、そして久し振りの光の刺激の強さに目を開けられないでいると、大きな怒号、いや、歓声とでも呼ぶべき多くの歓喜の声が重なり合った声が聞こえてくる。
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