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ブカブカの服で誤魔化そうとしてる小柄で細っこい体は、肌も髪も、まるで色を抜いた様に白くて現実感がない。
おまけに両目は綺麗な赤色。
色素が極端に薄いのだろうか、その姿はまるでシロウサギ。
だって頭からはウサギみたいに長い耳が力なく地面に向かって垂れているから。
だけどアタシはアリスなんて名前じゃない。
物語の主人公にはとてもじゃないけど役不足。
「アタシ、アリスなんて名前じゃない……」
「オレだって、シロウサギなんかじゃない。
でも今はシロウサギってことになってる」
怯えたように見開いた目は、嘘みたいに真直ぐアタシを捕らえる。
返事は一つきりだと、その目が教えてくれた。
「お前が、アリスか?」
繰り返される問い。
姉さんは、気付かない。
気付いてくれない。
……逃げられない。
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