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あの日の夜、部屋を飛び出した和樹は熱くなる感情を抑えながら走っていた。
これほどまでに沙織の事を思っている。
それが何故分からないのかと……。
沙織が旅立つ日も見送りする事なく、ただ空を見上げていただけだった。
もう会わないと心に誓い、和樹は沙織の事を忘れようとしていた。
だが、沙織が留学して数年が過ぎた頃、たまたまテレビに映る沙織を見つけた。
それは、留学生達の特集だった。
その中に映る沙織は、一緒にいた時よりも明るい表情をしていた。
忘れようとしていたあの時の想い。
和樹は、沙織が帰ってくるまで待つ事にした。
そして二人は今、長い月日を経て、お互いの温もりを感じあっていた。
「もう離さないよ……」
和樹の言葉に沙織は、ただ涙しながら頷いている……。
-----完
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