11人が本棚に入れています
本棚に追加
/9ページ
☆☆☆
「和樹ごめんね……。私ドイツへ留学する事に決めたの」
意を決した表情を見せた沙織は、目の前で唖然とする彼氏を見ていた。
体の弱い沙織が、一人で海外へ留学などと誰もが反対するに決まっている。
それは目の前の和樹も例外ではなかった。
「お前さ、自分の体がどんなだか知ってるだろ?」
それは沙織の体の事を心配すればこそだった。
沙織は定期検診を受ける為、いつもの総合病院へ母親と行った時、和樹と初めて出会った。
車が来ている事に気付かない子供が、突然飛び出した。
丁度そこに和樹が出くわし、子供を助けたと聞いた。
その時、車に跳ねられたのだと笑いながら言っていた。
右足を骨折した和樹は、長い通院を必要としていた。
そんなある日、沙織と和樹が出会ったのだ。
車椅子で母親に押されながら廊下を進む沙織の前に現れた和樹。
「落としましたよ」と言いながら、ハンカチを取ってくれた。
爽やかな笑顔で近付く和樹に、ドキリと胸が締め付けられた。
それが二人の初めての出会い。
二人は病院ですれ違う度、話すようになり、いつしか親密な関係になっていたのだ。
最初のコメントを投稿しよう!