時の旅人

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☆☆☆ 「和樹ごめんね……。私ドイツへ留学する事に決めたの」 意を決した表情を見せた沙織は、目の前で唖然とする彼氏を見ていた。 体の弱い沙織が、一人で海外へ留学などと誰もが反対するに決まっている。 それは目の前の和樹も例外ではなかった。 「お前さ、自分の体がどんなだか知ってるだろ?」 それは沙織の体の事を心配すればこそだった。 沙織は定期検診を受ける為、いつもの総合病院へ母親と行った時、和樹と初めて出会った。 車が来ている事に気付かない子供が、突然飛び出した。 丁度そこに和樹が出くわし、子供を助けたと聞いた。 その時、車に跳ねられたのだと笑いながら言っていた。 右足を骨折した和樹は、長い通院を必要としていた。 そんなある日、沙織と和樹が出会ったのだ。 車椅子で母親に押されながら廊下を進む沙織の前に現れた和樹。 「落としましたよ」と言いながら、ハンカチを取ってくれた。 爽やかな笑顔で近付く和樹に、ドキリと胸が締め付けられた。 それが二人の初めての出会い。 二人は病院ですれ違う度、話すようになり、いつしか親密な関係になっていたのだ。
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